ゴッホ「靴」とは?蚤の市で買って泥道を歩いた、くたびれた作業靴

アムステルダムのゴッホ美術館にある、履きつぶされた一足の靴の絵

フィンセント・ファン・ゴッホ「靴」(1886年9〜11月)アムステルダム、ゴッホ美術館所蔵

「靴」とは

茶色がかった灰色の床に、ひと組の古い革の靴が置かれています。片方は履き口が折れ曲がり、もう片方は靴ひもがほどけて床に垂れています。フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890年)が1886年にパリで描いた「靴」です。

所蔵はアムステルダムのゴッホ美術館です。館の作品ページによると、1886年9月から11月にパリで描かれ、カンヴァスに油彩で、大きさは縦38.1cm、横45.3cmです。

館は、履きつぶした靴は、絵の題材としてはめずらしい選び方だったと紹介しています。ゴッホはこの題材で、何点かの静物画を描きました。

フィンセント・ファン・ゴッホ「靴」(1886年)ひと組の古い靴の部分。ゴッホ美術館所蔵

制作の背景、蚤の市の作業靴と泥の道

ゴッホは1886年から、弟テオの住むパリで暮らしていました。オランダにいた頃は、「ジャガイモを食べる人々」のように、農民の暮らしを暗い色で描いていました。

ゴッホ美術館によると、パリでゴッホと知り合いだった人が、この靴の話を書き残しています。ゴッホは蚤の市で古い作業靴を買い、それを履いて泥の中を歩き、すっかり汚れるまで歩き回りました。そうなってはじめて、絵に描くだけのおもしろさがあると感じたのだそうです。

この頃、ゴッホはパリで人物を描くためのモデルを雇うお金がなく、自画像をたくさん描いていました。翌1887年の夏には、明るい色の「麦わら帽子の自画像」も描いています。

フィンセント・ファン・ゴッホ「自画像(麦わら帽子の自画像)」(1887年夏)デトロイト美術館所蔵。同じパリ時代の絵です

技法と色彩、ほかの絵の上に描いた靴

ゴッホ美術館によると、ゴッホはこの「靴」を、別の絵の上に描きました。下にあるのは、弟テオのアパルトマンから見た眺めの絵です。館は、ゴッホがほかのときにも同じカンヴァスを何度か使っていて、それはお金を節約するための方法だったと説明しています。

画面は、茶色や黒、灰色、黄土色といった、落ち着いた色でまとめられています。靴の革は、黒と茶色の厚い筆の跡で、しわや傷みが描かれています。つま先やひもの部分には、白っぽい色が置かれ、光が当たっているように見えます。

左上には、赤い絵の具で「Vincent」の署名があります。

メトロポリタン美術館によると、ゴッホはパリにいたあいだに、靴やブーツを描いた静物画を何点か描いています。

フィンセント・ファン・ゴッホ「靴」折れ曲がった靴の履き口のディテールフィンセント・ファン・ゴッホ「靴」靴ひもとつま先のディテールフィンセント・ファン・ゴッホ「靴」床に垂れたほどけた靴ひものディテールフィンセント・ファン・ゴッホ「靴」左上の赤い署名のディテール

アルルで描いた、もうひと組の靴

ゴッホは、南フランスのアルルに移ったあとの1888年にも、靴の絵を描いています。ニューヨークのメトロポリタン美術館にある「靴」です。カンヴァスに油彩で、大きさは縦45.7cm、横55.2cmです。

メトロポリタン美術館は、この絵を、パリ時代の題材にもう一度戻った、めずらしい1点だとしています。ここでは靴が、具体的な場所に置かれています。黄色い家の赤いタイルの床です。

館は、描かれた場所だけでなく、靴の持ち主もわかるかもしれないと紹介しています。この「年取った農夫の古い靴の静物」は、ゴッホが同じ頃の1888年夏の終わりに肖像を描いた、農夫パシアンス・エスカリエの靴だったのではないか、という説があるそうです。

パリの「靴」の暗い色にくらべて、アルルの「靴」は、桃色やオレンジ、黄色の明るい色で描かれています。2年のあいだに、ゴッホの色がどれだけ変わったかがよくわかります。

フィンセント・ファン・ゴッホ「靴」(1888年)ニューヨーク、メトロポリタン美術館所蔵。黄色い家の赤いタイルの床に置かれた靴です

身のまわりの物を描いたゴッホの静物

ゴッホは、靴のように、身近にあるありふれた物をよく描きました。アルルでは、黄色い家で使っていた木の椅子を「ゴッホの椅子」に描いています。座面には、パイプとたばこの袋が置かれています。

椅子も靴も、誰も座っていない、誰も履いていない姿で描かれています。ロンドンのナショナル・ギャラリーは、「ゴッホの椅子」と「ゴーギャンの椅子」を、肖像の代わりになる静物だと説明しています。

Museum Boxでは、フランス国立美術館連合(RMN-GP)のミュージアムグッズを扱っています。

「靴」を見るには、ゴッホ美術館とメトロポリタン美術館

ゴッホ美術館の「靴」(1886年)は、館の作品ページで展示中とされています。館の案内によると、入館料は大人25ユーロで、2027年1月1日からは26ユーロになります。18歳未満は無料です。開館はおおむね毎日9時からで、閉館は時期によって17時か18時、金曜日は21時までの日があります。

メトロポリタン美術館の「靴」(1888年)は、館の作品ページで822番の展示室に展示中とされています。開館は10時から17時で、金曜と土曜は21時まで、水曜日は休館です。入館料は大人30ドルです。

展示室は替わることがあるので、出かける前に館のサイトで確かめてください。

Museum Boxでは、フランス国立美術館連合(RMN-GP)のミュージアムグッズを扱っています。アルル時代のゴッホ「アルルの寝室」のポスターや、「星月夜」のスノードームなど、日常を彩るアートグッズをお届けします。

よくある質問

ゴッホの「靴」はどこにある?

パリで描いた1886年の「靴」はアムステルダムのゴッホ美術館、アルルで描いた1888年の「靴」はニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵しています。

ゴッホ美術館の「靴」はいつ描かれた?

館の作品ページによると、1886年9月から11月にパリで描かれました。大きさは縦38.1cm、横45.3cmです。

なぜ古い靴を描いたの?

ゴッホ美術館によると、ゴッホは蚤の市で古い作業靴を買い、それを履いて泥の中を歩き、汚れきってはじめて描くだけのおもしろさがあると感じたそうです。パリでゴッホと知り合いだった人が書き残しています。

「靴」の下には別の絵がある?

はい。ゴッホ美術館によると、弟テオのアパルトマンからの眺めの絵の上に描かれています。カンヴァスを何度か使うのは、お金を節約する方法でした。

ゴッホの絵のグッズはどこで買える?

Museum Boxでは、フランス国立美術館連合(RMN-GP)のミュージアムグッズを販売しています。「アルルの寝室」のポスターや「星月夜」のスノードームなど、日常を彩るアートグッズをお届けしています。