ゴッホ「アルルの女」とは?1時間で描いたカフェの女主人ジヌー夫人の肖像

黄色い背景の前で頬づえをつく、アルルの駅前のカフェの女主人

フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの女(ジヌー夫人)」(1888〜89年)ニューヨーク、メトロポリタン美術館所蔵

「アルルの女」とは

あざやかな黄色の背景の前で、黒い服の女性が頬づえをつき、少し遠くを見ています。白い肩掛けに、黒い髪をまとめたアルル風の髪型。フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890年)の「アルルの女」です。

モデルは、南フランスのアルルの駅前でカフェを営んでいたマリー・ジヌー(1848〜1911年)です。ゴッホは1888年から89年にかけて、ほとんど同じ構図でジヌー夫人を2点描きました。パリのオルセー美術館の1点と、ニューヨークのメトロポリタン美術館の1点です。

メトロポリタン美術館の絵は、1888〜89年の作で、カンヴァスに油彩、大きさは縦91.4cm、横73.7cmです。テーブルの上には本が置かれています。オルセー美術館の絵は1888年11月初めの作で、縦92.5cm、横73.5cm、テーブルの上には日傘と手袋があります。

フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの女(ジヌー夫人)」(1888〜89年)頬づえをつく女性と椅子の部分。メトロポリタン美術館所蔵

制作の背景、駅前のカフェの女主人

オルセー美術館によると、ジヌー夫人はアルルの駅前のカフェ「カフェ・ド・ラ・ガール」の女主人で、ゴッホやポール・ゴーギャンなど画家たちとよく接していました。ゴッホはアルルに着いた頃、ジヌー夫妻のところに部屋を借りていて、アルルにいるあいだずっと夫人と親しくしていました。

館によると、ジヌー夫人も「神経の発作」に悩んでいて、1888年12月にゴッホが入院したときには、ゴッホの世話をしています。

ゴッホが「アルルの女」を描いたのは、ゴーギャンがアルルに来てまもない1888年11月の初めです。同じ頃、ゴッホはアルルの郊外で「赤い葡萄畑」を描いています。プーシキン美術館は、「赤い葡萄畑」の白いショールの女性を、多くの研究者がジヌー夫人だと考えていると紹介しています。

ジヌー夫妻のカフェは、ゴッホが「夜のカフェ」に描いた店です。ゴーギャンも、同じ店とジヌー夫人を描きました。

フィンセント・ファン・ゴッホ「赤い葡萄畑」(1888年11月)モスクワ、プーシキン美術館所蔵。「アルルの女」と同じ頃に描かれた絵です

技法と色彩、レモン色の背景とプルシアンブルーの服

1888年11月3日ごろ、ゴッホは弟テオへの手紙にこう書いています。「やっと、アルルの女を描いた。30号の人物画で、1時間で描き上げた。背景は淡いレモン色、顔は灰色、服は黒、真っ黒で、生のままのプルシアンブルー。緑のテーブルにもたれ、オレンジ色の木の肘掛け椅子に座っている」(j'ai enfin une Arlésienne, une figure (toile de 30) sabrée dans une heure, fond citron pâle)。

オルセー美術館は、この手紙を引いて、大きな絵なのに描くのに1時間しかかからず、筆の速さと、モデルの考えにふけるような姿がよく対比していると紹介しています。そして、ゴッホは体の欠点を隠さず、むしろ強めることで、モデルの深い人間らしさを見せていると書いています。

メトロポリタン美術館によると、手紙に書かれた「1時間で描いた」絵は、より薄く、すばやく描かれたオルセー美術館の1点のはずです。メトロポリタン美術館の1点では、テーブルの上の小物が、日傘と手袋ではなく本になっています。

フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの女(ジヌー夫人)」頬づえをつくジヌー夫人の顔のディテールフィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの女(ジヌー夫人)」青いリボンとオレンジの椅子のディテールフィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの女(ジヌー夫人)」白い肩掛けと刺しゅうのディテールフィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの女(ジヌー夫人)」緑のテーブルの上の本のディテール

オルセー美術館の1点、パリ解放の日に約束された寄贈

オルセー美術館の「アルルの女」は、館の作品ページによると、今は5階(最上階)の36番の展示室にあります。

館の来歴の記録によると、この絵はまずパリの画材商タンギーの店にあり、そのあとパリのアメデ・シュフネッケルの画廊、ミュンヘンのツィンマーマンのコレクション、ベルギーのテア・シュテルンハイムの手を経て、1915年にマリアンネ・フォン・フリートレンダー=フルトのものになりました。のちのゴルトシュミット=ロートシルト男爵夫人です。

夫人は1944年8月25日、パリが解放されたその日に、この絵を国に寄贈すると表明しました。国が受け入れたのは1952年で、夫人が使う権利を残したままの寄贈でした。その権利が終わった1974年からルーヴル美術館のジュ・ド・ポーム館に置かれ、1986年にオルセー美術館に移っています。

一方、メトロポリタン美術館の1点は、館によると、モデルのジヌー夫人自身が1895年に売るまで持っていました。

フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの女」(1888年11月)パリ、オルセー美術館所蔵。テーブルに日傘と手袋が置かれています

アルルで描かれた人々の肖像

アルルにいた頃、ゴッホは身近な人たちの肖像をくり返し描きました。郵便配達人のジョゼフ・ルーランとその家族、そしてジヌー夫人です。

ジヌー夫妻のカフェは、ゴッホの住んだ黄色い家のそばにありました。ゴッホは1888年9月、このカフェの店内を「夜のカフェ」に描いています。

オルセー美術館によると、ゴーギャンもジヌー夫人を描きました。プーシキン美術館は、ゴーギャンがこの店を描いた「アルルのカフェ」を所蔵しています。同じ時に同じモデルを前にした2人の画家が、それぞれどう描いたかを見比べるのも、アルルの絵の楽しみ方のひとつです。

Museum Boxでは、フランス国立美術館連合(RMN-GP)のミュージアムグッズを扱っています。

「アルルの女」を見るには、オルセー美術館とメトロポリタン美術館

オルセー美術館の「アルルの女」は、館の作品ページで5階(最上階)の36番の展示室とされています。館の案内によると、開館は火曜日から日曜日の9時30分から18時で、木曜日は21時45分までです。月曜日と5月1日、12月25日は休館です。入館料は一般16ユーロ(オンライン)で、館の窓口では14ユーロと案内されています。2026年3月10日から2028年の夏まで、入口まわりの改修工事が行われています。

メトロポリタン美術館の「アルルの女(ジヌー夫人)」は、館の作品ページで825番の展示室に展示中とされています。開館は10時から17時で、金曜と土曜は21時まで、水曜日は休館です。入館料は大人30ドルです。

展示室は替わることがあるので、出かける前に館のサイトで確かめてください。

Museum Boxでは、フランス国立美術館連合(RMN-GP)のミュージアムグッズを扱っています。オルセー美術館所蔵のゴッホ「アルルの寝室」のポスターや、「ローヌ川の星月夜」のスノードームなど、日常を彩るアートグッズをお届けします。

よくある質問

ゴッホの「アルルの女」はどこにある?

ほとんど同じ構図の2点があります。テーブルに日傘と手袋があるものはパリのオルセー美術館、本があるものはニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵しています。

「アルルの女」のモデルは誰?

アルルの駅前でカフェを営んでいたマリー・ジヌー(1848〜1911年)です。ゴッホはアルルに着いた頃、ジヌー夫妻のところに部屋を借りていました。

「アルルの女」はいつ描かれた?

オルセー美術館の1点は1888年11月初めです。メトロポリタン美術館の1点は、館の記録では1888〜89年です。

本当に1時間で描いたの?

ゴッホは1888年11月3日ごろの手紙に、アルルの女を「1時間で描き上げた」と書いています。メトロポリタン美術館は、それがより薄く、すばやく描かれたオルセー美術館の1点のはずだとしています。

「アルルの女」の大きさは?

オルセー美術館の1点は縦92.5cm、横73.5cm、メトロポリタン美術館の1点は縦91.4cm、横73.7cmです。どちらもカンヴァスに油彩で描かれています。

ゴッホの絵のグッズはどこで買える?

Museum Boxでは、フランス国立美術館連合(RMN-GP)のミュージアムグッズを販売しています。オルセー美術館所蔵の「アルルの寝室」のポスターや「ローヌ川の星月夜」のスノードームなど、日常を彩るアートグッズをお届けしています。