ゴッホ「悲しむ老人(永遠の門で)」とは?療養院で描き直した、ハーグ時代の素描
オランダのクレラー=ミュラー美術館にある、両手で顔をおおう老人の絵

「悲しむ老人」とは
青い服の老人が、木の椅子に腰かけ、両手で顔をおおって前かがみになっています。左にはストーブの火、足もとは板張りの床。フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890年)の「悲しむ老人」です。「永遠の門で」という題でも知られています。
所蔵はオランダのオッテルローにあるクレラー=ミュラー美術館です。館の題名は「悲しむ老人(永遠の門で)」です。館の作品ページによると、1890年5月に描かれ、カンヴァスに油彩で描かれています。
描かれたのは、南フランスのサン=レミの療養院でした。ただし、この絵のもとになったのは、ゴッホがそれより8年前、オランダで描いた素描です。

制作の背景、深い落ち込みのあとの仕事
クレラー=ミュラー美術館によると、1890年4月の終わり、ゴッホはまた深い落ち込みから回復しつつありました。早く仕事を再開したいと考えたゴッホは、オランダのブラバント地方にいた頃の人物の素描を、いくつか描き直すことにしました。
そのひとつが「永遠の門で」でした。館によると、もとになったのは、ゴッホが1882年にハーグで描いた素描です。その素描には、エッテンで見た題材が使われていました。
館は、ゴッホが落ち込んでいた時期には、素描や絵を描き直したいという気持ちによくなったと紹介しています。自分はまだ十分にできていない、もっと学びつづけなければならないと考えたからです。そして同時に、まったく違う描き方を身につけた今、ブラバント時代の作品を描き直したらどうなるのか、という好奇心もあったと館は説明しています。
ゴッホは、オランダにいた頃、「ジャガイモを食べる人々」のように、働く人々の暮らしを暗い色で描いていました。
技法と色彩、色で描き直した老人
クレラー=ミュラー美術館によると、この絵は素描をそのまま色をつけて写したものではありません。ゴッホは構図を変え、椅子やストーブなど、療養院の部屋にあったものを取り入れたのかもしれません。老人のポーズも、療養院の患者に頼んでとってもらった可能性が高いと館は書いています。
画面は、明るい青と黄色、オレンジでまとめられています。老人の服は水色と青の筆の跡で、体の線に沿って流れるように描かれています。椅子は黄色と黄緑、床は黄土色と緑の筆の跡で、板の向きに沿って引かれています。
両手で顔をおおった姿は、顔の表情を見せません。背中を丸め、ひじをひざにのせた姿勢で描かれています。
左のストーブの火は、オレンジと赤、緑の短い線で描かれています。




療養院の最後の月に描かれた絵
「悲しむ老人」が描かれた1890年5月は、ゴッホがサン=レミの療養院で過ごした最後の月でした。ゴッホはこの月のうちに療養院を出て、パリの北のオーヴェール=シュル=オワーズに移ります。
同じ5月には、クレラー=ミュラー美術館の「糸杉と星の見える道」も描かれています。館は、こちらをプロヴァンスで受けた印象のまとめとして描かれた絵だと紹介しています。南フランスの夜空と糸杉を描いた絵と、オランダ時代の素描を描き直した絵が、同じ月に生まれたことになります。
療養院にいるあいだ、ゴッホはミレーの版画をもとにした絵も描きました。オルセー美術館の「昼寝」もそのひとつです。「悲しむ老人」は、ほかの人の作品ではなく、自分自身の昔の素描を描き直した点で、それらとは違う1点です。
誰もいない椅子と、うずくまる老人
アルルでゴッホは、誰も座っていない椅子だけを描いた「ゴッホの椅子」を残しています。この「悲しむ老人」では、椅子に人が座り、その人は顔をおおっています。
ゴッホは、身のまわりの道具や、働く人の姿を、生涯くり返し描きました。オランダ時代の素描の題材と、南フランスで手に入れた明るい色の描き方が、この1枚の中で出会っています。
Museum Boxでは、フランス国立美術館連合(RMN-GP)のミュージアムグッズを扱っています。
「悲しむ老人」を見るには、クレラー=ミュラー美術館
「悲しむ老人(永遠の門で)」は、オランダのデ・ホーへ・フェルウェ国立公園の中にあるクレラー=ミュラー美術館で、館の作品ページでは展示中とされています。
館では、2026年9月15日から2027年1月3日まで、所蔵するゴッホの絵88点を1984年以来初めて全部並べる展覧会「ゴッホ、私たちのすべての絵」が開かれています。展覧会を見るには、入館券のほかに、開始時間を指定した展覧会券(追加料金なし)が必要です。
館の案内によると、開館は火曜日から日曜日と祝日の10時から17時です。入館には公園と美術館の共通券が必要で、大人は27.75ユーロです。出かける前に館のサイトで確かめてください。
Museum Boxでは、フランス国立美術館連合(RMN-GP)のミュージアムグッズを扱っています。ゴッホ「星月夜」をモチーフにしたスノードームやポスター、扇子など、日常を彩るアートグッズをお届けします。
よくある質問
ゴッホの「悲しむ老人(永遠の門で)」はどこにある?
オランダのオッテルローにあるクレラー=ミュラー美術館が所蔵しています。館の作品ページでは展示中とされています。
いつ描かれた?
クレラー=ミュラー美術館によると、1890年5月です。南フランスのサン=レミの療養院にいた最後の月に描かれました。
もとになった作品はある?
はい。クレラー=ミュラー美術館によると、ゴッホが1882年にハーグで描いた素描をもとにしています。その素描には、エッテンで見た題材が使われていました。
モデルは誰?
はっきりとはわかっていません。クレラー=ミュラー美術館は、療養院の患者にポーズをとってもらった可能性が高いとしています。
ゴッホの絵のグッズはどこで買える?
Museum Boxでは、フランス国立美術館連合(RMN-GP)のミュージアムグッズを販売しています。ゴッホ「星月夜」をモチーフにしたスノードーム、ポスター、扇子など、日常を彩るアートグッズをお届けしています。