ポーラ美術館の見どころ完全ガイド|必見作品・回り方・チケット情報
箱根のブナ林に眠る美の殿堂——ルノワール76点が日本で待ち続けている

「絵を描くということは、愛するということだ」
ポーラ美術館とは
箱根・仙石原のブナ林のなか、地面に溶け込むような低い建物があります——ポーラ美術館(Pola Museum of Art)です。2002年9月1日の開館以来、「森の中の美術館」として多くの美術愛好家に愛され続けてきました。地上1階・地下2階という構成の建物は周囲の自然景観を壊さないよう設計されており、ガラス越しに森の緑が展示室に差し込む独特の空間体験が訪れる人を魅了します。
館を支えるのは、ポーラ化粧品の2代目会長・鈴木常司(すずきつねじ、1929-2000)が生涯をかけて蒐集した約9,500点のコレクションです。1950年代に最初のルノワール作品をパリで購入して以来、半世紀にわたって西洋絵画・日本洋画・化粧道具・ガラス工芸などを精力的に収集しました。運営は公益財団法人ポーラ美術振興財団が担い、鈴木の没後2年にあたる2002年に美術館として開館しました。
コレクションの核はフランス印象派を中心とする19〜20世紀の西洋絵画です。なかでもピエール=オーギュスト・ルノワールの作品はおよそ76点を収蔵し、フランス国外では屈指の規模のルノワール・コレクションとして国際的にも高く評価されています。クロード・モネ、ポール・セザンヌ、パブロ・ピカソ、アメデオ・モディリアーニら近現代西洋絵画を代表する巨匠の作品が揃うほか、黒田清輝をはじめとする日本洋画の名作も充実しており、東西の美術史を横断する稀有なコレクションを擁しています。
年間来場者数はおよそ30万人。温泉や自然散策で知られる箱根に、フランス印象派の至宝が集う美の聖地として、開館から20年以上にわたり多くの人々に親しまれています。箱根の山あいで世界クラスの印象派絵画と向き合える体験は、日本国内ではここにしかない贅沢です。

ポーラ美術館の必見作品5選
ポーラ美術館のコレクション最大の特色は、ルノワールの充実度です。約76点に及ぶルノワール作品はフランス国外では最高水準の規模を誇り、ポートレート・風景・裸婦・花など多様なジャンルにわたります。なかでも「帽子の女」(Femme au chapeau noir, 1891年)はポーラ美術館を代表する1点です。黒い帽子を被った女性の豊かな存在感、暖かみのある色調、柔らかな筆触——晩年へと向かう熟成したルノワールの画風が結晶したポートレートで、実物の前に立てばその輝きに息を呑むことでしょう。ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」に代表される印象派の喜びと光の世界が、ここポーラにも息づいています。
モネ「睡蓮」系の作品もポーラのコレクションに含まれています。晩年のモネが睡蓮の池に向き合い続けた瞑想的な世界——ポーラの所蔵作品でも、水面に映る光と影の揺らぎを感じることができます。「芸術家の庭、アルジャントゥイユ」などの風景画とあわせて、モネが一生をかけて追い求めた「光の瞬間」を体感できます。
セザンヌの静物画や風景画も重要なコレクションのひとつです。りんごやオレンジを多視点から捉えた構成的な筆致は、ルノワールやモネとはまた異なる知的な秩序への意志を感じさせます。後期印象派として印象派をさらに深化させたセザンヌの作品は、ポーラのコレクションの中でも知的な核を担っています。
モディリアーニの長い顔と細めた目の肖像、ピカソの多彩な造形の世界——20世紀のさまざまな芸術言語も揃っています。さらにB2フロアには黒田清輝をはじめとする明治・大正期の日本洋画の名作が展示されています。フランスで印象派を学び帰国した日本人画家たちの作品と、本場フランスの印象派が同じ館に並ぶ贅沢な体験は、ポーラ美術館ならではです。




化粧品王の夢——鈴木常司が半世紀かけて集めた印象派の至宝
「化粧品とアートは同じ美への愛情から生まれる」——ポーラ美術館の精神的な支柱となったのは、創業者・鈴木常司のこの信念でした。ポーラ化粧品2代目会長として会社を率いながら、1950年代に初めてルノワールの作品をパリのオークションで購入したとき、鈴木はまだ20代の若者でした。その一点が呼び水となり、以後半世紀にわたってフランス印象派を中心とする西洋絵画の収集が続きました。
鈴木が絵画収集に傾けた情熱は、単なる富の誇示とは一線を画するものでした。収集する際には必ず自ら現地を訪ね、作品の前に長い時間をかけて向き合いました。「化粧品は人の顔を美しく変えることができる、しかし絵画は人の心を変える力を持つ」——そう語った鈴木にとって、コレクションとは個人の財産ではなく、将来の日本人が美と向き合うための財産でした。ルノワール76点をはじめ、モネ・セザンヌ・ピカソ・モディリアーニなど約9,500点に及ぶコレクションは、その信念の結晶です。
美術館の建設地として箱根・仙石原が選ばれた理由のひとつは、豊かな自然環境です。設計を担当した建築家・安田幸一は、建物をブナ林の中に「沈める」コンセプトを採用しました。大地に埋まるように地下へと展開する建築は、外観からはほとんど美術館に見えません。しかしひとたび内部に入れば、ガラス張りの通路から四季折々の森の姿が目に飛び込んでくる——自然と美術が渾然一体となる体験が設計されています。鈴木常司は美術館の完成を見届けることなく2000年に逝去しましたが、彼が夢見た「自然の中で美と出会う場所」は、今日も多くの人々の心を打ち続けています。

効率的な回り方——おすすめルートと所要時間
所要時間の目安は、ハイライトを中心に回るなら1.5〜2時間、コレクション全体をじっくり鑑賞するなら3〜4時間です。B2フロアからB1フロア、1階の特別展示室まで含めると、思った以上にボリュームがあります。体力や時間に合わせて、あらかじめ「見たいフロア」を絞っておくと充実した鑑賞ができます。
おすすめの鑑賞ルートは、B2フロア(日本洋画・化粧道具・ガラス工芸)から始めてB1フロア(近代西洋絵画:セザンヌ・ピカソ・モディリアーニ等)、さらに1階のルノワール・モネのコーナーへと上がっていくルートです。時代の流れをたどりながら鑑賞でき、最後にルノワールの豊麗な世界で締めくくるという流れが自然です。なお特別展が開催中の時期は展示室の配置が変わることがあります。
混雑のピークは土日祝日の午前中(10時〜12時)です。比較的空いているのは平日の午後(13時〜15時)で、梅雨の平日などはゆったり鑑賞できる穴場シーズンです。秋(10〜11月)は紅葉と重なるため特に観光客が増えますが、紅葉の森の中での鑑賞は格別の美しさです。鑑賞後はぜひ館内のレストラン「カラヴァッジョ(CARAVAGGIO)」に立ち寄ってみてください。ガラス越しに箱根の自然を望みながらフレンチ・イタリアンベースの料理を楽しめます。美術鑑賞の余韻を食事で締めくくる体験は、ポーラ美術館ならではの特別な時間です。

チケット・料金・アクセス
入場料は一般2,000円、大学生・高校生1,500円、中学生以下無料です(2025年現在)。障害者手帳をお持ちの方および同伴者1名は無料で入館できます。チケットはオンライン事前購入が可能で、公式サイト(polamuseum.or.jp)または各種チケット販売サービスから購入できます。特別展や夜間開館「ナイトミュージアム」の開催期間中は料金・時間が異なる場合がありますので、訪問前に公式サイトで最新情報をご確認ください。
開館時間は9:00〜17:00(最終入場16:30)です。月曜日が休館日で、祝日にあたる場合は翌平日が休館となります。展示替え期間中も臨時休館があります。一方、ゴールデンウィーク・夏休み・秋の連休期間は無休で開館します。
アクセスは電車とバスの組み合わせが一般的です。小田急線「箱根湯本」駅または小田急・JR「小田原」駅から箱根登山バス・伊豆箱根バスに乗車し、「ポーラ美術館」バス停で下車するとすぐです(小田原駅から約50分)。「仙石案内所前」バス停下車・徒歩12分というルートもあります。新宿から高速バス「箱根高速バス」で仙石案内所前まで直行する便も便利です。お車の場合は東名高速道路「御殿場IC」から約30分、または小田原厚木道路「小田原西IC」から約40分で、美術館に隣接する無料駐車場(約200台)をご利用いただけます。住所は〒250-0631 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285です。
ポーラ美術館のおすすめミュージアムグッズ
ポーラ美術館の館内ミュージアムショップでは、コレクション作品をモチーフにしたポストカード・ポスター・書籍・雑貨など、バラエティ豊かなグッズが揃います。なかでもルノワール作品をモチーフにしたアイテムは種類が豊富で、美術館ならではのセンスが光る商品が人気です。特別展に合わせたオリジナルグッズや、箱根の自然をイメージした季節限定グッズも見逃せません。ショップは入館料不要でご利用いただけます。
Museum Boxでは、フランス国立美術館連合(RMN-GP)を取得したルノワール・モネ・セザンヌの作品をモチーフにしたグッズを日本からご購入いただけます。ポーラ美術館のコレクションを代表するルノワール作品と同じ時代・同じ感性から生まれた印象派の傑作をモチーフにした扇子、マグカップ、ノートブック、ポストカードなど、バラエティ豊かなラインアップが揃っています。
RMN-GPミュージアムグッズはフランス国立美術館が認めた品質のもとで製造されており、作品の色彩や質感を忠実に再現しています。箱根のポーラ美術館で印象派の世界に触れた後は、日常生活の中にもその感動を持ち込んでみてください。
近くの美術館——箱根のアートスポット
ポーラ美術館が位置する箱根・仙石原エリアには、個性豊かな美術館が集まっています。ポーラ美術館を訪れた際にぜひセットで巡っていただきたい美術館を2館ご紹介します。
彫刻の森美術館(The Hakone Open-Air Museum)は、ポーラ美術館から車で約10分ほどのところにある日本最初の野外美術館です。1969年の開館以来、ロダン・ヘンリー・ムーアらの彫刻作品を箱根の自然の中に展示しています。ピカソ館ではピカソの絵画・彫刻・陶芸など188点を常設展示しており、ポーラ美術館のピカソコレクションとあわせて鑑賞すると、多面的なピカソの世界を体験できます。屋外展示のため天候次第ですが、晴れた日の散策は格別の心地よさです。
岡田美術館は箱根湯本近くに位置する私立美術館で、2013年に開館しました。日本・中国・韓国の陶磁器・絵画・彫刻など5,000点以上を所蔵し、浮世絵・日本画・東洋工芸の充実したコレクションで知られます。ポーラ美術館の西洋絵画と対比させることで、東西の美術の違いと共通点がくっきりと浮かび上がります。美術館に隣接する足湯も好評です。
まとめ——ポーラ美術館を最大限に楽しむために
ポーラ美術館の最大の魅力は、「箱根のブナ林の中で世界一流の印象派を鑑賞する」という体験の唯一無二さです。ルーヴルやオルセーに行かずとも、自然豊かな箱根でルノワール76点に囲まれた時間を過ごせる——それはどこにも代えがたい贅沢です。鈴木常司が「美は万人のものだ」という信念のもとに半世紀をかけて蒐集したコレクションは、今日も箱根の山あいで静かに人々を待っています。
訪問のベストシーズンは新緑の5〜6月と、紅葉の10〜11月です。5月のブナの若葉が展示室のガラスを通して淡く輝く季節、11月の錦色に染まる森の中での鑑賞——どちらも四季折々の自然との共演という、この美術館ならではの体験を最大限に味わえる時期です。梅雨の6月は観光客が少なく、静かに作品と向き合える穴場の季節でもあります。
「美術館は難しそう」と感じる方も、ポーラ美術館では心配は不要です。ルノワールの色彩の豊かさは難解な解説なしに直接心に届き、ガラスの外に広がる箱根の自然がいつでも迎えてくれます。箱根観光の定番(温泉・登山・芦ノ湖)とセットで訪れることができるアクセスの良さも魅力で、旅程に組み込みやすい美術館です。何度訪れても季節ごとに異なる表情に出会える——それがポーラ美術館が愛され続ける理由です。
よくある質問
ポーラ美術館の入場料はいくらですか?
一般2,000円、大学生・高校生1,500円、中学生以下無料です(2025年現在)。障害者手帳をお持ちの方および同伴者1名は無料で入館できます。最新情報は公式サイト(polamuseum.or.jp)でご確認ください。
ポーラ美術館の開館時間・休館日は?
9:00〜17:00(最終入場16:30)で開館しています。月曜日が定休日(祝日の場合は翌平日が休館)、展示替え期間中も臨時休館があります。ゴールデンウィーク・夏休み・秋の連休期間は無休開館します。最新情報は公式サイトでご確認ください。
ポーラ美術館へのアクセスは?
箱根登山バス・伊豆箱根バスで「ポーラ美術館」バス停下車すぐ(小田原駅から約50分)。または「仙石案内所前」バス停下車徒歩12分。お車の場合は東名高速「御殿場IC」から約30分で、無料駐車場(約200台)があります。住所は〒250-0631 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285です。
ポーラ美術館の所要時間はどのくらいですか?
ハイライトを中心に回るなら1.5〜2時間が目安です。コレクション全体をじっくり鑑賞するなら3〜4時間を確保してください。カフェ「レストランCARAVAGGIO」での食事も楽しむなら、半日程度の余裕を持つことをおすすめします。
ポーラ美術館で一番有名な作品は?
ルノワール「帽子の女」(1891年)がポーラ美術館の代表作として知られています。約76点のルノワール作品を所蔵しており、フランス国外では最高水準のルノワール・コレクションです。モネ、セザンヌ、ピカソ、モディリアーニの作品も必見です。
ポーラ美術館のグッズはどこで買えますか?
Museum Boxでは、フランス国立美術館連合(RMN-GP)のルノワール・モネ・セザンヌの印象派グッズを日本からご購入いただけます。ポーラ美術館のコレクションを代表する印象派の傑作をモチーフにした扇子・マグカップ・ノートなどが揃っています。